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2023年11月30日更新

[沖縄スポット]豊かな水をたたえる湧泉|糸満市与座|シマ散策(20)

地域の人におすすめのスポットを案内してもらい、その地の魅力を再発見する企画。今回紹介するのは、糸満市与座。歴史サークル「南山歴史研究会」の会長、伊敷賢さん(73)に県内屈指の水量を誇る湧泉「与座ガー」とその周辺の史跡などを案内してもらいました。

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豊かな水をたたえる湧泉  【糸満市与座】

与座ガー公園を流れる湧き水。琉球王国の王子が詠んだ与座ガーを題材にした琉歌もあるという。左はかつてサトウキビを搾る水車があったことを物語るモニュメント(11月撮影)

糸満市の東側に位置し八重瀬町と接する「与座」。集落は標高168メートルほどの石灰岩丘陵である与座岳の麓にある。伊敷さんは「与座岳は市内で最高峰、中南部の山の中でも屈指の高さです。糸満市史によると、その中腹にある与座グスクには第一尚氏王統・尚巴志の先祖が住んでいました」と説明する。

集落内には豊富な水量を誇る湧泉「与座ガー」がある。石積みで作られたカー(井泉)で、こんこんと水が流れる。戦後しばらくは米軍が給水のためのワーラーポイント(水源地)として接収していたが、現在は与座ガー公園として整備され住民の憩いの場になっている。「県内の湧き水の中ではトップクラスの水量です。与座の重要な水源で水道が普及するまでは生活用水として使われました。若水や産湯に使う水をくむンブガー(産井泉)でもありました」。

与座ガーには「古泉(フルガー)」「大御泉(ウフガー)」「湧泉(ワクガー)」の三つの水源があり、それらを祭る祠(ほこら)が設けられていて、ウマチー(麦と稲の農耕儀礼)などで各門中が参拝している。

「昔はもっと水量があってサワガニやフナがたくさんいました。大ウナギがすんでいるという噂もあって、私も子どものころに目撃したことがあります」と振り返る。

与座ガーの水は現在も農業用水として使われているが、18世紀には琉球王府の命で東風平や兼城など近隣の農地に水を引くため用水路が掘られたという。「湧泉」のそばには石積みの用水路跡が残っている。「工事の際に出たきた大きな石は『ふた石』と呼ばれ信仰の対象になりました。今でもウシデーク(祭祀(さいし)舞踊)の行事で拝まれています」。



与座ガーの湧き水をたたえた公園内の池。夏は水遊びのスポットとして家族連れでにぎわう


与座ガーの水源の一つ「古泉(フルガー)」。正月の若水をくむ場所でもあった


沖縄初の機械製糖工場である高嶺製糖工場跡


水車で製糖も

与座はサトウキビ栽培が盛んで、戦前は与座ガーの下流の広場にサーターヤー(製糖小屋、製糖場)があった。「サトウキビを搾るサーターグルマ(砂糖車)は、与座ガーの水を利用した水車と馬を動力とした馬車を併用していました。水量が多いため回転が速く、短時間で作業ができたそうです」。

また、集落の北側には明治44年に建設された沖縄初の機械製糖工場である高嶺製糖工場があった。「沖縄戦で破壊され、今は糖蜜タンクだけが残っています。非製糖期には与座ガーの水を使って製氷もしていたそうです」



市内で最高峰の与座岳。中腹には尚巴志の先祖が住んでいた与座グスクがある
 





案内してくれたのは

南山歴史研究会 会長 伊敷賢さん
勉強会を開き三山時代の、特に地元南山の歴史伝承を学んでいる
電話=090(1948)4637


取材/池原拓
『週刊ほ〜むぷらざ』シマ散策 

第1895号 2023年11月30日掲載

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