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2023年7月13日更新
[沖縄スポット]風習伝える「龕屋」を復元|沖縄市古謝|シマ散策(17)
地域の人におすすめのスポットを案内してもらい、その地の魅力を再発見する企画。今回は、沖縄市古謝を訪ねました。
風習伝える「龕屋」(ガンヤー)を復元 【沖縄市古謝】
地域の人におすすめのスポットを案内してもらい、その地の魅力を再発見する企画。今回は、沖縄市古謝を訪ねました。沖縄市観光物産振興協会認定ガイドの宮城仁さんは、「昔、沖縄の風習で死者を墓まで運ぶために使われていた龕(がん)を納める龕屋(ガンヤー)が今でも大切に残されています」と話す。
沖縄市の南東側に位置する「古謝」。その名は琉球王府が編さんした歌謡集「おもろそうし」にも登場する歴史のある集落で、井泉や拝所などの文化財が多く残る。沖縄市観光物産振興協会認定ガイドの宮城仁さんは「古謝の名称は、この一帯の地質であるクチャ(粘土質)に由来すると言われています」と説明する。
古謝は水が豊富で、集落内には井泉が点在している。宮城さんは「伝承によると、村の創始は15世紀の三山鼎立時代に北山が滅ぼされ、北山按司の縁者が古謝の北にある丘陵・津嘉山森に移り住んだのが始まり。その後、人口増加に伴って水を求めてこの地に移動してきたとされています」と話す。
集落の北の傾斜地にある「ウーチューガー」は、津嘉山森から移動してきて最初に使われた井泉といわれている。石積みの立派な造りで、かつては集落の飲料用水として利用され、正月の若水もここからくんだそう。ほかにも、子どもの誕生の際に産水をくんだ「産井泉」や、葬儀で死者を清める水として使った「ソーリガー」、ノロ(祝女)が行事の際に身を清めた「美栄泉」を案内してもらった。
「古謝のビジュル(左下)とアコウの巨樹」。子育てや安産を祈願する拝所。そばにあるアコウの木は樹齢100年以上といわれる。市指定文化財
井泉「ウーチェーガー」。子どもの誕生の際に産水をくんだ
台風で倒壊寸前に
古謝を散策していると、地元の人たちが地域の文化や信仰を大切に守ってきたことが感じられた。集落の東にある龕屋もその一つ。龕屋とは、沖縄の風習で死者を墓まで運ぶために使われていた「龕」を納める建物のこと。古謝の龕は、昭和33年ごろまで使われていたそう。宮城さんは「約10年前、台風で龕屋が倒壊寸前になりました。しかし、地元の人たちは先祖から継承された龕屋の復元に取り組み、龕は沖縄市の池原自治会から寄贈されて6年前に復元されました」と話す。
村の魔よけの石獅子「アガリヌシーサー」。両手を広げた形がユニーク
集落の南にある「古謝のビジュル(霊石)」は、子孫繁栄の祈願を行う拝所で、寄り添うようにアコウの大木が根を張っている。「樹高は12㍍ほどあります。昔、大きな津波があって水没したことがありましたが、それでも木のてっぺんは見えたという言い伝えがあります」と宮城さん。ほかにも、かつてノロが祭祀を行った「シチャウガン」や「古謝之殿」など拝所が数多く残っている。これらの拝所は、現在も旧暦の1日と15日に集落の長老たちが住民の健康や安全を祈願するなど地域の人たちに信仰されている。
かつてノロが五穀豊穣などを祈願する祭祀を行った「シチャウガン」
「古謝の龕屋(ガンヤー)」。死者を墓まで運ぶために使われていた「龕(がん)」を収める建物。台風で倒壊したが地元の人たちによって復元された
龕屋内にある「龕」。池原自治会から寄贈された
案内してくれたのは
沖縄市観光物産振興協会
認定ガイド 宮城仁さん
沖縄市の歴史にふれる「コザまちまーい」のガイドをしている(有料)。
電話 098(989)5566
取材/池原拓
『週刊ほ〜むぷらざ』シマ散策
第1875号 2023年7月13日掲載