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2023年4月20日更新
[沖縄スポット]シマ散策(13)|那覇市首里|弁之御嶽(ビンヌウタキ)と虎頭山(トゥラジヤマ)
地域の人におすすめのスポットを案内してもらい、その地の魅力を再発見する企画。今回は、那覇市首里地域にある八つの景勝地「首里八景」のうち、弁之御嶽(ビンヌウタキ)と虎頭山(トゥラジヤマ)周辺を訪ねました。首里の歴史愛好家サークル「古都首里探訪会」のメンバーに案内してもらいました。
漢詩に残る古都の景勝 【那覇市首里 地域】
首里城の龍潭をはじめ、漢詩でその景勝をたたえられた「首里八景」。その一つ、首里城の東側、首里鳥堀町にある「弁之御嶽」(弁ケ岳)は165㍍ほどの高さの丘陵で、琉球王国時代に国王が参拝した拝所の一つ。現在、「弁ケ岳公園」として整備されている。
今回の散策のスタート地点となった「国王頌徳碑」は、16世紀に首里城から弁之御嶽への参道を整備した国王の徳をたたえたものだ。参道の周りには松並木が続いていたという。かつての参道周辺も今は住宅地になっている。
古都首里探訪会の会長、知名勇さんは「弁之御嶽は、かつては松の名勝でした。沖縄戦の前まで琉球松などの大木が茂っていましたが、戦火で消失してしまいました」と話す。今はガジュマルなどがうっそうと茂っている。
弁之御嶽をさらに東に進むと、王国時代に灯台の役目を果たしたとされるのろし台跡「火立毛(フィータティモー)」がある。標高160㍍ほどの丘の上にあり、副会長の平田由美さんは「沖を航行する船に島の位置を知らせるため、松葉をたいてのろしを上げたと言われています」と話す。東は太平洋、西は東シナ海が一望できる。しばしパノラマビューの景色を楽しみ、開放的な気分にひたった。
「弁之御嶽(弁ケ岳公園)」にある遊歩道。散策も楽しめる
弁之御嶽にある弁之井泉(ビンヌカー)。琉球王府の儀式として、元日に「若水」をくむ場所の一つだった
王国時代に灯台の役目を果たした「火立毛」に登る古都首里探訪会のメンバー。背景に太平洋が広がる
文人が詩歌を詠んだ地
次に向かったのは首里城の北北東、首里赤平町にある「虎頭山」。標高約130㍍の琉球石灰岩の丘陵で、現在は虎瀬公園として整備されている。展望台から首里城の城壁や那覇の街並みが見渡せる。
会員の宮城保茂さんは「ここもかつては松の名勝で、松や月を題材にした詩歌が多く残されています」と説明する。しかし、沖縄戦で松林は消失し、名前の由来となった虎の頭に見えた岩山も破壊されたという。
道中、虎頭山に通じる坂道「仏の坂(フトゥキヌフィラ)」を歩いた。坂の途中に火災を防いだり無病息災を願った小さな祠があることが名前の由来といわれる。昔ながらの石敷きの古道で、いにしえの風景が目の前に広がっていた。
虎頭山に通じる坂道「仏の坂」。坂の途中にほこらがある
「虎頭山(虎瀬公園)」にある展望台。那覇の街並みが見渡せる
案内してくれたのは
古都首里探訪会
首里公民館を拠点に首里の歴史愛好家が集うサークル。
首里の名跡・旧跡を資料で調べ、フィールドワークも行う。
問い合わせは、古都首里探訪会 事務局長 宮城保茂
電話=090(7299)6010
取材/池原拓
『週刊ほ〜むぷらざ』シマ散策
第1863号 2023年4月20日掲載