[高齢者の乳がん②]ホルモン受容体が7割|身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳

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家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。前回に続き沖縄でも増えている高齢者の乳がんにスポットを当て、ハートライフ病院乳腺外科センター長の柏葉匡寛先生に話を聞きます。(取材/堀基子・ライター)

再発率・死亡率を下げる術後薬物療法/個々の患者に最適な治療を

Q1 高齢だから進行が遅い?

「高齢になると乳がんの進行が遅くなるのではないか」と勘違いされている方がいますが、そんなことはありません。

乳がんを大別すると、ホルモン受容体が陽性のタイプ、HER2というタンパク質が陽性のタイプ、ホルモン受容体とHER2ともに陰性のトリプルネガティブという三つのサブタイプに分かれ、さらにホルモン受容体陽性のものは、がん細胞の増殖が比較的緩やかなルミナルAと、増殖力が高いルミナルBに分かれます。この中で、HER2、トリプルネガティブ、ルミナルBは、年齢にかかわらず進行が早いタイプです。

高齢の場合、乳がん検診を受けていない方も多く、進行してから発見される場合も少なくないので、油断は禁物です。

Q2 高齢者に多い乳がんのタイプは?

30代以下では65%だったホルモン受容体陽性乳がんが、40代から60代では73%、70代以降では76%に増加しています。特に加齢とともに増えているのがルミナルAで、70歳以降では58%を占めています。

ルミナルAの治療では、転移・再発を防ぐため、手術後にホルモン療法を行います。その副作用は、のぼせや関節の痛みなどで、抗がん剤に比べると身体的な負担やストレスが少ないことから、9割以上の方が5年間の治療を最後まで継続しています。

高齢者に多いホルモン受容体陽性乳がん

乳がんの中でも、年齢を重ねると増えてくるのがホルモン受容体陽性乳がん(ルミナルAとルミナルB)。下の円グラフのように特に70歳以降では、がん細胞の増殖が比較的緩やかなルミナルAが6割近くを占めています。ルミナルAの手術後の薬物療法のベースとなるホルモン剤は、抗がん剤に比べると副作用が穏やかなので、高齢者が継続しやすい治療法とのことです。

Q3 高齢でも術後、薬物療法は必要?

手術で乳がんのしこりを取り除いても体内には画像検査では見えないがん細胞(微小転移)が残っていて、10年以上を経てから再発することもありますが、最新医療ではがん由来のDNAを検出して再発を予測する技術が急激に進んでいます。

転移や再発のリスクを減らすには術後薬物療法が有効で、乳がんのサブタイプによって、ホルモン療法、抗がん剤、免疫療法などを組み合わせます。特に高齢者に多いホルモン受容体陽性乳がんは、5年間ホルモン療法を続けると、ホルモン治療をしていない人と比べて10年間の再発率がおよそ半分になります。

抗がん剤については、必要な方を遺伝子レベルで予測する検査の普及で以前より対象となる方は減っています。しかし、高齢だからと不用意に量や回数を減らすと効果が期待できなくなるので、吐き気や白血球減少といった副作用を緩和する支持療法を行いながらゴールを目指します。

納得して治療を受けるためには、治療の実現可能性、メリットとリスク、余命などを、患者と家族と医療者がよく話し合い、一緒に治療方針を決める共有意思決定が非常に大切です。高齢者の場合、糖尿病など他の持病や心身の機能低下で急激に全身の状態が悪化するケースもあるため、他科との連携や救急医療体制も重要だと考えます。


次回は、術前薬物療法後に残ったがん細胞の最新治療について聞きます。

教えてくれた人

かしわば まさひろ/ハートライフ病院乳腺外科センター長
医師、医学博士。日本乳癌学会指導医。日本乳癌学会ガイドライン(薬物療法)作成委員や乳がん研究団体JBCRG理事を歴任。さまざまな抗がん剤の開発治験や標準治療の確立に携わる。モットーは「世界的な標準治療を安全かつ高いレベルで提供する」。

お問い合わせ

社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院
沖縄県中城村字伊集208
電話 098(895)3255


毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳(145)
第2035号(2026年8月13日発行)から転載