「医療保険は必要でしょうか?」。家計相談の場でよく聞かれる質問の一つです。
日本の医療制度は充実しており、窓口負担割合や高額療養費制度など医療費負担を抑える仕組みが整っているので、「医療保険はいらない」と考えることは合理的な判断と言えるでしょう。しかし、ここで見落とされがちな視点に「医療費以外にかかる負担」があります。これは一人一人の生活背景によって異なり、医療保険の必要性を考える際に大切な要素です。一部を紹介しましょう。(文/岡田有里・ファイナンシャルプランナー)
自分の状況に合う備えを
医療費以外も家計へ影響
病気やケガで入院・通院が必要になった場合、医療費以外にも家計へ影響が出ることがあります。
・仕事を休むことで収入が減る
・通院のために労働時間が制限される
・体力的に以前と同じように働けない
こうした影響が重なることで、「思った以上に家計が厳しくなる」というケースは珍しくありません。
特に、シフト制やパート勤務など労働時間がそのまま収入になる働き方の場合、数日休むだけでも収入に影響が出ます。非正規雇用や子育てと両立して働いている人は、この影響がより直接的に表れる傾向があるので、「数週間働けない」という状況は、単なる医療費以上の不安につながることがあります。
国立がん研究センターによる、がん診断後の社会的・経済的な影響の調査(患者体験調査報告書 2023年度調査)によると、がんと診断された時に就労していた割合は全体の44.1%で、そのうちの72.8%が治療のために休職・休業・退職・廃業をしたと答えています。そして、治療を受けるために金銭的負担の影響を受けたと答えた人は全体の24.2%に対して若年がん患者(18~40歳未満)は44.9%という回答でした。この統計からも、年齢層によって備え方を変える必要があることが分かります。=下表参照

昔の保険は見直しを
もう一つ見逃せないのが、医療そのものの変化です。かつては入院期間が長く、「医療保険=入院費への備え」というイメージがありました。しかし現在は、医療の進歩により入院は短期化し、通院治療の比重が高まっているので「入院日額は手厚いが、通院や生活への備えが薄い」医療保険では実際のニーズと保障内容にズレが生じるケースをよく見かけます。
若い時に加入して長く続けてきた保険ほど“時代とのズレ”が生じている可能性があるため、長く入っているから安心と思っている人は一度加入中の保険内容が現在の制度やご自身の生活ニーズに合っているかを確認してみると良いでしょう。
必要な備えは人それぞれ
医療保険は、「みんなに必要」「誰にも不要」と一律に言い切れるものではありません。
働き方、家族構成、貯蓄状況、支出のバランス-。それぞれの事情によって、必要な備えの形は変わります。だからこそ、「世間の正解」ではなく「自分に合っているか」という視点が大切です。
実際の相談の現場でも、同じ年代・同じ収入であっても、選ぶ備えは大きく異なります。それは、一人一人生活の背景が違うからです。医療保険は、1度入ったら終わりではなく、ライフステージに合わせて考えていくものです。公的保険という土台の上に、個人のライフプランや経済状況に応じた適切な医療保険やがん保険を上乗せして備えることが未来の安心につながると筆者は考えます。
執筆者プロフィル

おかだ・ゆり/ファイナンシャルアライアンス(株)沖縄支店所属。外資系企業をへて沖縄へ。女性のマネー知識の底上げをライフワークに活動
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第2025号(2026年6月4日発行)より転載