[肺がん③]負担が少ない放射線治療 根治目的から痛み改善も|身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳

家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。今回は肺がんの3回目として放射線治療にスポットを当て、国立病院機構沖縄病院の放射線治療科で医長を務める橋本成司先生に話を聞きます。(取材/堀基子・ライター)

手術適応外や再発・転移にも

Q1 放射線治療はなんとなく怖い?

放射線と聞くと、放射能による全身のひばくのような印象を受ける方もいるようです。しかし実際はレーザービームやスポットライトのイメージが近く、病巣に絞って正確に細いエックス線のビームを当てる治療です。当たった部位以外に直接の影響はなく、放射能はいっさい残りません。治療中に痛みや熱さなども感じませんので、どうぞご安心下さい。当院では汎用(はんよう)型の最新装置を使用しており、ミリ単位の高精度な治療が可能です。

肺がんにおいては、早期がんの段階、特定の範囲で進行したがん、他の臓器に転移がある方、術後などに再発・転移した場合のいずれのケースであっても、放射線治療を検討することができます。特に早期がんに対するピンポイント放射線治療は、身体の負担が少なくかつ手術に匹敵する治療成績が示されており、ご高齢の方や持病があっても安全に受けられることが多いです。1回わずか15分ほど、最短で4回の治療です。

手術と異なる点は、放射線治療後の肺がんはゆっくり縮小・消滅する場合もあり、長い目で経過を観察する必要があることです。これまで100歳を超える方も数人、問題なく治療を受けていただきました。「以前の手術がつらかった」、「身体を傷つけたくない」と放射線を選択される方もいらっしゃいます。

Q2 進行した肺がんの治療は?

手術で取り切れないと判断される場合であっても、根治を目指した放射線治療は検討できます。手術と比較して、安全により広い範囲にビームを当てて治療する事が可能です。治療効果を高めるために薬物療法を併用することもあります。放射線治療は1回15分ほど寝ていれば終わるため、体力的な負担も少なく済みます。進行した肺がんでは最大30回ほど治療する場合があります。

Q3 再発や転移したがんにも?

再発・転移がんにも、放射線治療は非常に有効です。肺がんは脳に転移しやすい性質がありますが、その場合はまず治療効果の高いピンポイント治療を検討します。骨も転移して痛みが出やすい場所の一つですが、わずか1回の治療で痛みの改善効果が期待できます。実際に辛い症状が楽になり、笑顔で報告してくださる方も多く、私たちも医療者として最もうれしい事の一つです。特に背骨の転移は脊髄まひを生じるおそれがあり、痛みが出る前であっても治療を検討しています。

これからも放射線治療科は、外科・内科・緩和医療科と連携し、肺がんのチーム医療に取り組み続けます。

放射線治療は、レーザービームを当てるイメージ

装置の台の上に10分ほど横たわっているだけで済む肺がんの放射線治療は、高齢者や持病があって手術できないケースや、再発・転移の場合にも用いられています(独立行政法人 国立病院機構 沖縄病院提供)

教えてくれた人

橋本成司/独立行政法人 国立病院機構 沖縄病院 放射線治療科医長
はしもと・せいじ/医師。琉球大学医学部医学科卒。琉球大学病院放射線科、那覇市立病院や南部徳洲会病院の放射線治療科を経て、2025年4月から現職。日本医学放射線学会および日本放射線腫瘍学会認定放射線治療専門医。モットーは「自分や家族であっても受けたいと思う治療を行う」。

お問い合わせ

独立行政法人 国立病院機構 沖縄病院
沖縄県宜野湾市我如古3ー20ー14
電話 098(898)2121


毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳(143)
第2026号(2026年6月11日発行)から転載