[肺がん①]国内男性のがん死で1位|身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳

家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。今回から3回にわたり、肺がんにスポットを当て、沖縄県でもっとも治療実績が多い国立病院機構沖縄病院の外科部長で肺がんセンター長を務める饒平名知史先生に話を聞きます。(取材/堀基子・ライター)

胸腔鏡併用の小開胸手術/手術+投薬で治療成績が向上

Q1 肺がんとは?

国内の肺がん患者は、40代から増え始め、60代以降に多く、がん患者のうちの、罹患(りかん)者数は男女ともに3位、がん死亡者数の男性1位、女性2位となっています。男性の患者数は、女性の約2倍です。また、肺がんの中でも過半数を占めているのが腺がん、約3割が扁平(へんぺい)上皮がん、約1割が小細胞がんとなっています。

Q2 どんな手術をするの?

かつては肩甲骨の下から胸の横にかけて切開する開胸手術が主流でしたが、近年は胸腔(きょうくう)鏡を用いる手術が増えています。胸腔鏡下手術は傷あとが小さい、痛みが少ない、呼吸筋の損失が少ないという利点がある一方、開胸手術は患部の触診が可能で、出血時にも迅速に対応できるという長所があり、当院では両方のメリットを生かせる胸腔鏡併用手術を主に行っています。

通常は肺葉(肺を構成する五つの部分)のいずれかの切除と、周辺にあるリンパ節をまとめて切除する手術が標準術式となります。ごく早期で、小さく切除しても根治が期待できる場合や、肺機能が十分ではない場合などは、肺の一部を切除する縮小手術を行います。また、進行した肺がんに対しては、周辺の胸壁・横隔膜・大血管などをまとめて切除する拡大肺切除が必要になります。しかし、当科では、気管支形成術や肺動脈形成術を含む血管再建術を積極的に行い、可能な限り片方の肺全部の切除を回避して肺機能の温存を図っています。

Q3 手術と組み合わせる化学療法も?

近年、肺がん治療の進歩はめざましく、多様な術式に加え、免疫チェックポイント阻害剤(がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬剤)を用いた術前導入化学療法や術後補助化学療法、手術不能例に対する放射線治療、免疫チェックポイント阻害剤に細胞障害性抗がん剤を組み合わせた併用療法などにより、がんが完全に消失する可能性や5年全生存率が高まってきました。

より効果的に治療を行うために、当院では、外科、呼吸器内科、放射線治療科などの各診療科が連携してチーム医療に取り組み、さらなる治療成績向上を目指しています。

肺がん手術の種類

肺がんの手術には、完全胸腔鏡下手術、胸腔鏡併用手術、開胸手術があります。沖縄病院では、完全胸腔鏡下手術と開胸手術の両方のメリットを生かせる胸腔鏡併用手術を主に行っています。

【完全胸腔鏡下手術】

  • 最大4センチ以下の4カ所の創から胸腔鏡を入れて手術を行う。
  • 傷あとが小さく、痛みが少なく、呼吸筋の損失が少ない。
  • 出血時の対応が遅れる可能性がある。

【胸腔鏡併用手術】

  • 2カ所の小さな創から胸腔鏡を入れ、8センチ以下の創から手術を行う。
  • 腔鏡下手術と開胸手術の両方の利点を生かせる。

【開胸手術】

  • 肩甲骨の下から胸の横にかけて切開して手術を行う。
  • 患部の触診が可能で、出血時の対応が迅速。
  • 傷あとが大きく、痛みや違和感があり、呼吸筋の損失が大きい。

次回は、沖縄病院の呼吸器内科医長で肺がん副センター長を務める知花賢治先生に、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤など、肺がんの薬物療法について聞きます。

教えてくれた人

饒平名知史/独立行政法人 国立病院機構 沖縄病院 外科部長 肺がんセンター長
よへな・ともふみ/医学博士。九州がんセンターなどを経て、沖縄病院へ。2018年に肺がんセンター長、24年に外科部長に就任。日本外科学会指導医・専門医、日本胸部外科学会専門医、日本呼吸器外科専門医、日本肺癌学会暫定指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。モットーは「診療科の垣根を超えたボーダーレス・シームレスな肺がん医療の提供」。

お問い合わせ

独立行政法人 国立病院機構 沖縄病院
沖縄県宜野湾市我如古3ー20ー14
電話 098(898)2121


毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳(141)
第2017号(2026年4月9日発行)から転載