尿もれ(尿失禁)とは、自分の意思に反して尿がもれてしまうこと。生活の質を低下させ、尿もれを気にして外出を控えるようになると活動量が減って、フレイルにつながる恐れもあります。専門家に原因や予防について聞きました。
肥満や便秘改善 膀胱の訓練を
尿もれには主に、おなかに圧力がかかった際にもれる「腹圧性尿失禁」と、急に強い尿意が起こりトイレまで間に合わずにもれる「切迫性尿失禁」の二つのタイプがあるという。まちだ泌尿器科クリニックの院長、町田典子医師は「腹圧性尿失禁は骨盤底筋の緩みが要因。肥満は骨盤底筋に負担をかけるので、適正体重の維持を。骨盤底筋を鍛える運動も予防には大事です」と説明する。少しずつトイレに行くのを我慢する「膀胱(ぼうこう)訓練」は、切迫性尿失禁の改善が期待できるという。
教えてくれたのは

まちだ泌尿器科クリニック院長 町田典子さん
日本泌尿器科学会専門医。琉球大学医学部卒。琉球大学医学部附属病院や那覇市立病院、中頭病院などをへて、2021年に同院を開院。
Q1 原因と症状は?
A 突然の強い尿意 くしゃみで尿もれ
尿もれには、いくつかタイプがあります。その一つ、腹圧性尿失禁は、くしゃみや、笑った時、重い物を持った時、運動(ジャンプ、走る、階段を下りるなど)などでおなかに圧力がかかった際にもれるタイプです。主な原因は、「骨盤底筋(骨盤の底にある膀胱や子宮、直腸などの臓器を支える筋肉)」=下図=が緩むことによって尿道を締める「尿道括約筋」がうまく機能しなくなることです。特に女性は妊娠出産で骨盤底筋に負担をかけたり、閉経後は女性ホルモンの減少で筋肉の厚みやしなやかさが失われたりしてなりやすいと言われています。
切迫性尿失禁は、急に強い尿意が起こり、トイレまで間に合わずにもれてしまうタイプです。何らかの刺激によって膀胱が勝手に収縮して排尿してしまう「過活動膀胱」が主な原因です。日常のささいなことが刺激になって起こる場合があり、水の音を聞いたり、水に触れたり、急に寒い場所に出たりすることで、起こる人もいます。よくあるのが、帰宅して安心した途端にトイレのことを考えて膀胱が刺激されるといったパターンです。
尿もれは、生活の質(QOL)を低下させます。尿もれを気にして外出を控えるようになると活動量が減って、フレイルにつながる恐れもあります。
男女の骨盤底筋と膀胱


Q2 男性特有の症状は?
A ジワッもれる排尿後滴下
腹圧性と切迫性の両方の症状が混ざっている混合型尿失禁は、女性に多いです。男性に多いのが溢流性尿失禁。これは、何らかの要因で尿がうまく出せない状態(排尿障害)で、膀胱の容量を超えた尿があふれ出るタイプです。男性の場合、膀胱のすぐ下に尿道を取り囲むようにある前立腺=図1=が肥大化することで尿道が狭くなって起こることが一般的です。この前立腺肥大症は、尿の出が悪い状態を解消しようと膀胱が過敏になって、トイレが近くなる症状が現れることがあります。

ほかに男性特有のもれ方としては排尿後滴下が挙げられます。尿を出し切ったと思っても尿道に残っていた尿がジワッともれてしまう症状です。男性の尿道は女性より長く曲がっているため、途中に尿が残りやすく、加齢などで尿を押し出す筋肉が弱まると、尿道内に尿が残りやすくなります。対処法としては尿道のミルキングなどがあります=図2。

Q3 腹圧性尿失禁の予防は?
A 減量と骨盤底筋のトレーニング
肥満などの生活習慣の改善と骨盤底筋のトレーニングが予防には大事です。肥満は、おなかの脂肪が骨盤底筋に負担をかけます。8パーセント程度の減量でも、大きな改善効果が期待できると言われています。また、便秘も排便時にいきむことで腹圧が高まって骨盤底筋に負担をかけます。食物繊維をしっかりとるなどして、便通を整えることが推奨されます。
骨盤底筋のトレーニング=下図=は、ながらでもいいので回数をこなすことが大事です。こつは肛門と尿道付近の筋肉(女性なら膣、男性なら陰茎の付け根)を意識すること。骨盤底筋のような体の内側の筋肉を意識して動かすのはなかなか難しいので、まずは自分が意識しやすい姿勢(立つ、座る、寝る)を探すことから始めましょう。尾骨に触れながら行うと、筋肉の動きを確認しやすくなります。また、棒状に丸めたタオルをいすに置いてその上に座ると、ちょうど骨盤底筋がある場所にタオルが当たるので筋肉の動きを意識しやすくなります。テニスボールを股の間に挟んで締める動作も、ある程度は骨盤底筋を動かす運動になるのでまずはそれから始めてもいいかもしれません。基礎的なことを理学療法士などのプロに教わったり、インターネットの動画を参考にしたりするのも一つの方法です。
骨盤底筋トレーニング
【やり方】10秒だけ骨盤底筋を締めた後、30秒間は力を抜いて休む。10回それを繰り返す
【ポイント】いすに座って、立って、あおむけで、自分がやりやすい姿勢でやってみよう。骨盤底筋の締め方のこつは、肛門と尿道付近の筋肉を意識すること。肛門はおならを我慢するような感覚で、尿道付近は尿を途中で止めるような感覚で締めます。


Q4 切迫性には?
A 尿意我慢する訓練 カフェイン控える
尿意を感じてもトイレに行くのを少しずつ我慢することで排尿の間隔を延ばし、膀胱にためられる尿の量を増やす「膀胱訓練」によって尿意切迫感の軽減が期待できます。まずは5分、慣れたら10分と少しずつ我慢できる時間を延ばしていきます。最終的には2、3時間に1回(日中に7回以下)の排尿間隔を目指します。外出先で行うともらす可能性もあるので、最初は自宅などの安心できる場所で行いましょう。また、骨盤底筋トレーニングも切迫感改善に有用です。
熱中症に気をつけつつ適切な量の水分を摂取することも大事です。特に、コーヒーやお酒の飲み過ぎにも気をつけましょう。カフェインやアルコールは利尿作用があり、カフェイン自体に膀胱を刺激し切迫感を高める作用があります。
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取材/池原拓
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」人生100年!!ココカラ健康長寿(15)
第2029号(2026年7月2日発行)より転載
