「母」としての役割を脱ぐ|50代から人生を軽く 片付けコンサルタント・根原典枝の人生整理術

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整理収納をサポートする根原典枝さんが、人生を軽くするための心持ちをつづるエッセーがスタートします。50代になり、「完ぺきな母でいなくては」という「役割」を脱ぐことを決めた根原さん。人生を軽くするスイッチを入れたのは、意外なできごとでした。(文/根原典枝 株式会社暮らし方ラボ代表)


「もう十分、頑張ってきた」。50代になると、そんな言葉がふと心に浮かぶ瞬間があります。経験を重ね、人生の半分を生きてきたという実感がある。子育ても終盤を迎え、これまで背負ってきた役割が少しずつ形を変え始める頃です。

ふと立ち止まったときに、生じた問い。「私は、これからどう生きたいのだろう」

50代は、人生の棚卸しの年代なのかもしれません。実は先日、私自身にも「人生を軽くするスイッチ」が入る出来事がありました。

強い母を演じてきた

離婚後、これまで疎遠になっていた夫に、子どもたちが黙って会いに行っていたことを知りました。心の奥がザワッとし、理由を尋ねると子どもはこう言いました。「母さん、前に自分で決めていいって言ったじゃん。俺らに何を求めているんだよ」

その瞬間、胸の奥で張りつめていた糸がふっと緩んだ気がしました。子どもたちがまだ小さく、1人ですべてを担っていた。あの頃の辛さが、一気に押し寄せてきたのです。

でもその辛さは、子どもたちには本当の意味では分からないのでしょう。

なぜなら私は、ずっと強い母を演じてきたからです。金銭面も、家事も、子育ても。
弱い姿や不安は見せず、子どもたちの一番の理解者であり、一番の味方でありたい。そう思って、必死にやってきました。その裏には、私と子どもの気持ちは、同じ方向を向いているという思いがありました。でもその日初めて、それが思い込みだったのかもしれないと気づいたのです。

私はこれまで「子どもは子ども、私は私」と頭では理解しながらも、どこかで母という役割を背負い続けていたのだと思います。そんな私でなくてもいい。頭で理解するのではなく、ストンと腑(ふ)に落ちた瞬間でした。

その時、以前本で読んだ「生き恥をさらすことも、人生を生きる責任」という言葉を思い出しました。完璧な親でいなくては。弱さを見せてはいけない。そんな思い込みを、私はずっと抱えていました。でも、人は誰でも不完全です。その姿のまま生きていくことも、また人生なのだと思います。そして子どもたちに弱さをさらすことも、親としての責任なのかもしれません。

役割は服のようなもの

私はその日、少しだけ役割を脱ぎました。母でも父でもなく、私として生きることを自分に許したのです。幸せに年を重ねるために、50代から、人生を軽く。

役割を脱ぐのは、家族を大切にしないということではありません。例えば、毎日必ず作っていたお弁当を、作れる日だけ作る。家事の一部を、子どもに頼ってみる。「母だから全部やらなければ」そんな思い込みを手放すことで、心が軽くなりました。

一生懸命生きる毎日の中で、私たちは知らず知らずのうちに多くの役割を背負っています。母として。妻として。仕事場で。

でも、役割はあなたのすべてではありません。役割は人生のある時期に必要だから着ている“服”のようなもの。時には、その服をゆるめたり、脱ぎ替えたりしてもいいのです。

人、物、思考を片付ける

私はこれまで自分と対話しながら物の整理整頓を繰り返してきました。その積み重ねの中で、判断力、決断力、環境の変化への対応力が 自然と身についていきました。そしてそれは空間だけでなく人、物、思考の整理整頓へとつながっていきました。

部屋を整えることはただ物を片付けるだけではなく、今の自分に必要な物を知り、役目を終えた物を静かに手放していくことです。暮らしが軽くなると、人はもう一度自分の人生を選び直すことができるのかもしれません。

さて、あなたは今日、どんな役割を脱ぎますか。

執筆者プロフィル

ねはら・のりえ/1972年うるま市出身。2010年に片付け・掃除で悩む人をサポートする(株)暮らし方ラボを設立。
電話 080(2731)8883
https://kurashikata.co.jp

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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」50代から人生を軽く 片付けコンサルタント・根原典枝の人生整理術((1)
第2018号(2026年4月16日発行)より転載