企業の人材不足、「チームビルディング」で解消へ 派遣会社の女性社長を“支えるもの”|彩職賢美

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「人材派遣会社」から「人材派遣“も”できる会社」へ。(株)ビジネススタッフ代表取締役の髙木美香子さん(49)が目指すのは、人を必要とする企業と働きたい人をつなぐ、その先にある支援だ。問題が起きてから対処するのではなく、社員が健康で長く働ける土台をつくる、経営の伴走支援に力を注いでいる。(文/赤嶺初美・ライター、撮影/比嘉秀明)

(株)ビジネススタッフ 代表取締役の髙木美香子さん(49)

思いを届け、社員が育つ職場へ

個の力をチームの力に 誰もが輝ける道を開く

人材派遣を手掛け創業26年。父が営む税理士事務所の顧客から寄せられた相談をきっかけに、急な退職や産休で人手が足りない企業へ、必要な期間だけ人材を派遣する会社を設立。保育士から転身し、設立時から奮闘してきた高木美香子さんは13年前、代表に就任した。

稼働するスタッフの平均年齢は62.5歳。経験豊富な世代が安心して働ける場をつくってきた。そして、求職者向けにマナーやキャリア教育のセミナーを重ねる中で見えてきた課題から、人材育成を事業に加えた「派遣“も”できる会社」への転換を進めた。「派遣スタッフのスキルを整えるだけでは足りない。受け入れる企業の側にも、社員を育てる土壌が必要だ」と気づいた。個人の力をチームの力に変える、プロスポーツチームも導入する「チームビルディング」という手法を提供するようになった。「派遣は本当に会社の中に入り込む仕事。だからこそ、送りっぱなしにはしたくない。関わる人、みんなが輝いたら組織はもっと強くなる」と話す。

多くの企業で人材不足、社員の定着、職場の人間関係、メンタルヘルス、管理職の負担増加が経営課題となっている。特に中小企業は人材一人一人が重要な経営資源で、離職や休職は、採用コストだけでなく現場力や組織力の低下にもつながる。

離職者を繰り返し出す企業には、共通する背景があるという。「辞める側にばかり目を向けがちだけど、実は受け入れる企業側の意識こそ変化が必要な場合が多い」と指摘する。せっかく良い人材を紹介しても、代表の思いが届かず、同じような相談が繰り返されることがある。髙木さんが重視するのは、会社の方針や目標を日々の業務と結びつけて伝えることだ。「思いをただ熱く語っても社員には伝わりにくい。例えば採用基準も方針に沿って進め、社員と共有する。日々の判断が結びつくことで、社員は納得して動けるようになる」。新人研修では、抽象的な言葉ではなく、より具体的にイメージできる伝え方の工夫を促す。

髙木さんのワークでは、経営者、中間管理職、社員の声を個別に聞き取りながら伴走する。「私が間に入ることで、それぞれの本音が引き出せたり、理念がやっと分かったと受け止められたりする」と喜ぶ。あるスタッフは、さまざまな困難を抱え自信を持てずにいたが、任された業務を通じて少しずつ役割を担うようになり、7年たった今ではムードメーカーと呼ばれるまでに変わった。髙木さんは「働きたいという気持ちがあれば道は開ける。世の中に不必要な人はいない」と力を込める。


こうした姿勢の背景には、髙木さん自身の経験がある。中学から県外の学校の寮で暮らしたが、人間関係に悩み、苦しい時期があった。支えとなったのが、離れて暮らす父からの手紙だった。父は毎月、本や記事のコピーに感想を添えて送り続けた。その文通で出合ったのが「よかった探し」という考え方だ。同じ出来事でも、見方ひとつで受け止め方は変わる。「自分がいなくても誰も困らない」と思っていたが、父の温かなまなざしに支えられ、物事の受け止め方を変えていった。その経験が今の仕事につながっている。「あのときの父、見守ってくれた母、そして私のすべてを受け入れ支えてくれる夫がいて、私がある。すごく感謝しています」と笑顔を見せる。

人の弱さや悲しみ、心の奥にある夢や希望に気づき、寄り添えるのは、自身が同じ道を通ってきたからかもしれない。将来は貧困問題や地域課題にも取り組みたいと話す。人材派遣という枠を超え、企業と人をつなぎ続ける髙木さんの歩みは続く。

グッド・アンド・ニュー

髙木さんが自社や関係先でも大切にし取り入れているのが「グッド・アンド・ニュー」の時間。24時間以内にあった良かったことや初めて知ったことを1人ずつ短く発表し合う、チーム活性化の手法のことだ。

髙木さんは柔らかいボールを手渡しながら順に話すようにしている。「そうすることで緊張がほぐれ、安心感が生まれる」という。ある新入社員は「今朝ちゃんと起きられて良かった」としか言えなかったが、そこで「なぜ良かったのか」「どうして起きられたのか」を問い返すと、「昨日は早めに寝たから」と答えが返ってきた。「早く寝ればすっきり起きられる」という気付きが本人の中に生まれ、次第に発表の中身も、身近な出来事から仕事に関わる発見へと広がっていったという。「なぜ良かったのか」を自分の言葉で振り返ることが、無意識の行動を言語化し、自己肯定感を育てていく。朝礼や研修の冒頭に取り入れる企業も多く、髙木さんは「最初は言葉が続かなかった社員も、続けるうちに少しずつ自分の変化や工夫を語れるようになっていく。何げない日々の中にある『良いもの』を見つける力を育てる」と評価し、広めている。

写真はイメージ(比嘉秀明撮影)

学生や社員も、ワークショップで気付き

髙木さんは、企業だけでなく、学校でも講話やワークショップを行っている=写真。新入社員向けの研修では、ワークを通じて、電話応対や来客対応など、これまで職場で「当たり前」とされてきた行動を、あえて丁寧に言葉にして伝える。

髙木さん提供

学校では、マナーやメンタルコミュニケーションをテーマにした授業も担当。県外の学校でも、リベラルアーツと呼ばれる、生徒が自分の考えを多角的に見つめ、視野を広げる授業を担当しており「ぜひ県内の学校にも広げていきたい」と髙木さん。企業と教育現場の双方に関わることで、働き始める前の段階から人を育てる土壌づくりに取り組んでいる。

プロフィル

たかぎ・みかこ
1977年、現豊見城市出身。中学から短大まで県外で学び、卒業後、3年間の保育士勤務を経て、1999年、(株)ビジネススタッフに入社。2013年、代表取締役に就任。ビジネスマナーティーチング認定講師、チームビルディング講師など資格多数。県内公立学校や企業のほか、県外私立高校リベラルアーツゼミ(メンタルコミュニケーション学)でビジネスマナー、新人社員や電話対応、チームビルディングなどの各研修で講師を務める。1男の母

■(株)ビジネススタッフ
電話 098(855)2407

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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」彩職賢美〈1466〉
第2041号(2026年9月24日発行)より転載