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沖縄県では65歳未満の働き盛り世代で早く亡くなる方が多く、これが県の平均寿命や健康寿命を押し下げる要因となっています。ドクターにその原因などについて聞き、健康経営に取り組んでいる県内企業2社の保健師と社員に取り組みの内容や社員の健康意識の変化について語ってもらいました。(編集部/池原拓)
健康リテラシー高く 体の状態を見える化
30〜64歳の働き盛り世代の死亡原因で最も多いのが心筋梗塞や脳卒中といった高血圧性関連疾患。県医師会の会長、田名毅医師は「血圧に異常があっても未治療の人が多い。日頃から血圧をしっかり管理を」と呼び掛ける。
健康経営に取り組むホワイト500(※)認定企業、琉球銀行と沖縄セルラー電話の座談会では、会社が環境や仕組みを整えることで、健康維持のために社員の行動変容を促すことの重要性について話し合われた。
※ホワイト500とは 経済産業省と日本健康会議が実施する、優良な健康経営を実践している法人を顕彰する「健康経営優良法人認定制度」で、認定企業の中でも特に優れた上位500社に与えられる称号
教えてくれたのは

一般社団法人 沖縄県医師会 会長 田名毅さん
たな・たけし/琉球大学医学部卒業。2001年に田名内科クリニック(現在の首里城下町クリニック)を開院。2024年に沖縄県医師会会長に就任。現在2期目
家庭で日頃から血圧測定を
沖縄県医師会の調べでは、2022年の30〜64歳の働き盛り世代の死亡原因で最も多かったのが急性心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞や脳出血など)といった高血圧性関連疾患。会長の田名毅医師は「高血圧性関連疾患の中で最も多かったのは脳出血です。脳卒中の患者の内訳をみても沖縄は全国に比べて脳出血の割合が多く=図1、発症する年代も特に男性では50代から増え、全国より10年も早い60代でピークを迎えます=図2」と説明する。


これらのデータから、沖縄の働き盛り世代では高血圧であることを自覚していない、あるいは放置していて、未治療の人が多いことがうかがえると田名医師は指摘する。また、沖縄県は全世代で外来受診率が全国より低く、一方で入院治療率が高い傾向にあることも、大きな病気になって初めて病院で治療を受ける人が多いことを裏付けているという。「沖縄県では前期高齢者(65~74歳)の人口に占める、要介護3~5認定者数の割合が全国より高い状態で、このことからも働き盛り世代のうちに大きな病気になって、前期高齢者の時点で介護が必要になる人が多いことがうかがえます。元気で長生きするためにも日頃から自身の血圧をしっかり管理して、異常があれば適切な治療を受けてほしい」
血圧を管理するうえでの望ましいことについて、田名医師は「自分の血圧は大丈夫なのか日頃から確認するぐらい関心を持っていただきたい。ぜひ一家に1台、血圧計を置いてご家族で測定してほしい。県医師会が作成した血圧手帳には、正確に測定するための手順や2週間分の記録シートがついているのでぜひ活用してください。県医師会のホームページからダウンロードできます」と呼び掛ける。特に1日のうちで血圧が最も高くなりやすい、朝に計測することが大事だという。
「企業側も『社員は宝』という意識を持って、まずは健診受診率100%を目指すとともに、異常があるなら改善を図るよう社員に促すことが求められます。店舗・職場にも血圧計を設置するなど、社会全体で血圧を日常的に意識できる環境整備も大事だと思います」
環境を整え社員の行動変容を促す/ホワイト500認定の沖縄県内2社 琉球銀行・沖縄セルラー電話の取り組み

チームで、ゲーム感覚で運動!
—琉球銀行の健康経営の取り組みについて教えてください
琉・渡口 2019年から希望する職員に、歩数や体調データを記録するウエアラブル端末を無償貸与しています。当行の健康保険組合が導入している健康支援アプリを活用して、ウオーキングイベント「みんなで歩活(あるかつ)」を春と秋の年2回開催。イベント期間中に歩いた歩数をチームで競います。アプリでリアルタイムの順位が確認でき、ゲーム感覚で楽しみながら運動習慣を促します。
琉・東恩納 私もウエアラブル端末を利用しています。1日の歩数が見えると、少しずつ歩くことを意識するようになり、退勤時は徒歩で家に帰るなどして1日1万歩を目標にして歩くようになりました。「歩活」にも毎回参加していて、期間中は1日1万5千歩に目標を引き上げて意識的に歩く量を増やしています。
琉・渡口 当行の健保会館内のトレーニングジムをリニューアルし、新たに運動機器や体組成計を導入しました。週に2回、トレーナーを招いてグループレッスンや健康リスクのある職員向けの運動指導を実施しています。
琉・東恩納 私は仕事帰りに週2、3回ジムへ通っています。グループレッスンでは、部活のような雰囲気で楽しく運動をして、お互いにどう健康に気をつけているか共有するなど、仕事だけではない社員同士のコミュニケーションにつながっています。日常的な運動習慣によって、趣味の野球も以前よりもよく動けて、けがをしにくくなったと効果を実感しています。
琉・渡口 そのほかにも今年度から、全営業店で始業前にラジオ体操を実施。禁煙外来の費用補助や、睡眠時無呼吸検査の費用補助などを行っています。

琉球銀行では希望する社員にウエアラブル端末を無償貸与し、社員の健康維持に役立ている
セミナーで正しい情報を発信
—沖縄セルラー電話の健康経営の取り組みは?
セ・内間 社内に血圧計や体組成計を置いて、日頃から気軽に血圧や体重などを測定できる環境を整えています。年に1回、ウオーキングコンテストを実施して社員同士で楽しみながら運動習慣のモチベーションを高めています。
セ・森下 弊社アプリ(JO−TOホームドクター)を使って歩数、体重、血圧を管理しています。1日の歩数や、血圧や体重を測ることでPontaポイントなどがもらえる仕組みになっているので、楽しみながら健康管理につなげています。
セ・内間 社員食堂のメニューには塩分・脂質などの成分表示をし、社員には食事管理アプリの活用を推奨するなどして、食生活を改善するきっかけにしてもらっています。また、不足しがちな水分補給を促すため、社内に浄水サーバーを設置しています。
セ・森下 会社として社員の健康を見守る意識、取り組みが充実していると感じ、健康づくりのきっかけを作ってくれて助かっています。保健師側から健康面談のスケジュールを取って相談の機会を設けてくれるのもありがたい。
セ・内間 ネットで健康に関する情報があふれる昨今、社員一人一人に本当に必要な情報を提供することが大事だと考えています。そのため、ドクターなどを招いて健康セミナーを実施し、月1回の健康レターを発信して社員の健康リテラシーを高めています。
セ・森下 セミナーを業務時間内に実施することで、「健康管理は業務と同じくらい大事」という会社の姿勢が感じられて、参加しやすいですね。
琉・渡口 セルラーさんは、定期的にセミナーを開催していますが、多くの社員に参加してもらうために何か工夫されていることはありますか?
セ・内間 長時間になると業務との兼ね合いで参加しづらくなるので、毎回テーマをしぼって15〜30分程度とコンパクトにまとめ、録画配信で後から視聴できるようにしています。

沖縄セルラーでは、定期的に専門家を招いて、健康に関するセミナーを開催している
血圧など日々測定 生活改善の意欲向上
—社員にどんな変化が見られましたか?
セ・内間 セミナーに参加して、食べる量やお酒、たばこを少し控えようという声が社員からあがるようになりました。こうして会社側が能動的に情報を発信することで、それをきっかけに社員の健康意思やリテラシーが高まって実際の行動変容につながっていると思います。
セ・森下 セミナーは飲酒に関係する肝臓や、高血圧をテーマにした回が特に参考になりました。ドクターの話を聞くと説得力があり、いい刺激を受けて自分ごととして行動に移せました。私はお酒を飲む機会が多く、血圧が高かったこともあって、週5日ぐらい2、3㌔ランニングをしてから会社に行くようになりました。昼食は腹八分を心掛けています。継続は力なり。少しずつ血圧も改善してきています。
琉・渡口 本店食堂やビル内に設置している血圧計で毎朝、血圧や体重を測る社員も増えて、意識が変わってきていると感じます。有志で週に1回体重を測ってダイエット企画をするなど、楽しみながら生活改善につなげている社員もみられるようになりました。
琉・東恩納 私も毎朝、血圧・体重を測定して健康支援アプリに入力して管理しています。また、ジムに設置された体組成計で筋肉量や体脂肪率を測定して、過去のデータと比較しています。そうして自身の体の状態を見える化し、日々の体調変化に気づけるようになったことが健康づくりのモチベーションの維持につながっています。ウエアラブル端末は歩数だけでなく睡眠スコアも記録されるので睡眠の質も意識するようになり、「深酒を控える」などできることから少しずつ生活習慣を改善しています。
セ・森下 分かります。血圧を測るのが習慣になると、例えば飲み会が続くといつもより血圧は上がるんだなとか、日々の状態の変化に気づくようになりますね。自然と、飲み会を少し減らそうか、もっと運動をしようかと対策を考えるようになります。習慣化するって大事ですね。
琉・渡口 社員の行動変容を促すためには、個人の意識だけに頼らず「歩きたくなる・測りたくなる」環境や仕組みを会社が提供することが重要だと考えます。
セ・内間 職場に健康づくりを頑張る仲間がいることも後押しになりますね。
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」人生100年!!ココカラ健康長寿(17)
第2045号(2026年10月22日発行)より転載