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人や物の名前が出てこなくてもどかしい思いをすることはありませんか? 認知症の前段階である軽度認知障害の兆候かも。この段階なら健常な状態に戻る可能性があります。専門家に早期発見の重要性や予防について聞きました。 (編集部/池原拓)
専門医「40〜50代から血圧や血糖、悪玉コレステロールの管理を」
軽度認知障害や認知症の初期の段階で適切な治療を受け、生活習慣を改善することで、健常な状態に戻ったり、進行を抑えたりすることが期待できるという。シーサー通り内科リハビリクリニックの院長、城本高志医師は「40〜50代のうちから血圧や血糖、そして特にLDL(悪玉)コレステロールを適切にコントロールして動脈硬化を防ぐことが予防や進行を抑えることにつながります」と説明する。
教えてくれたのは

シーサー通り内科リハビリクリニック 院長 城本高志さん
認知症学会専門医・指導医、認知症予防学会専門医。2006年、福岡大学医学部卒。17年、大浜第一病院 脳神経内科部長。25年に同院を開院
Q1 軽度認知障害とは?
A 認知症の前段階 回復の余地あり
軽度認知障害(MCI)とは、健常な状態と認知症の中間に位置する前段階の状態です。この段階では「物忘れが増えた」などの自覚症状があっても、仕事や普段の生活は自立して行えます。MCIの段階にある人は、年間で約10%が認知症になり、5年後には約半数が認知症に移行すると言われています。その一方、年間約10%の人は健常な状態に戻る可能性があります。
認知症の6割以上を占めるアルツハイマー型は、残念ながら一度症状が出てしまうとなかなか健常にもどることは難しくなります。しかし、MCIや認知症の初期の段階で適切な治療を受け、生活習慣を改善することで、健常な状態に戻ったり、進行を抑えたりすることが期待できます。以前は認知症の進行を防ぐ有効な手段が限られていましたが、近年はアルツハイマー型の進行を大幅に抑える新薬が登場しました。この薬は、認知症が中等度以上に進行すると効果がないため、早期発見が重要になります。そのためにも本人に自覚症状があったり、周囲が異変に気づいたりしたら、一度受診することをおすすめします。
Q2 自覚症状や兆候は?
A 順序立てて行動できなくなる 怒りっぽくなるなど性格の変化
認知症の症状というと「人や物の名前が出てこなくなる」といった物忘れをイメージする人が多いと思いますが、ほかにも「電化製品の使い方が分からなくなる、料理など順序立てて物事を行うことが難しくなる」、「怒りっぽくなる、元気がなくなる」など、日常生活に支障をきたしたり、性格が変化したりすることが挙げられます=下図参照。

やっかいなのは認知症が進行すると、やがて本人に病気であるという自覚(病識)がなくなっていくこと。そのため、本人に自覚症状がある段階で医療機関や地域包括支援センターなどに相談しましょう。家族や友人が「以前と何か違う」「様子がおかしい」と感じた場合は、信ぴょう性が高いとされているので、周りが症状に気づいてあげることも大事です。
Q3 予防で大事なことは?
A 生活習慣病、特に脂質異常に注意
高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の予防・治療は、軽度認知障害(MCI)から健常な状態に戻ったり、認知症の進行を遅らせたりするため極めて重要です。
特に壮年期の40〜50代のうちから血圧・血糖・血中脂質を適切にコントロールしておくことは、認知症発症のリスクを抑えることにつながります。なぜなら、これらの生活習慣病は動脈硬化を促し脳内の血流を悪化させるからです。
健常な脳は、血管の収縮などを利用して脳内の老廃物(アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβなど)を排出しますが、動脈硬化が進んで血管が硬くなると、老廃物が脳に蓄積しやすくなります。
また、動脈硬化による脳卒中も(血管性)認知症の原因となります。

最新の知見では、特にLDL(悪玉)コレステロールの管理が血圧や血糖よりも認知症の予防には重要であることが分かってきました。
しかし、健康診断で異常があっても高血圧や糖尿病に比べて、脂質異常症は放置されがちです。健康診断などで指摘されたら、食事と運動による改善に加えて、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
ちなみにコレステロールは薬で数値が改善しやすく、血圧や血糖より比較的コントロールしやすいです。
Q4 生活習慣の改善は?
A 塩分・油を控え有酸素運動を
食生活では、塩分や油を控えるよう意識しましょう。実際、英国では循環器系の病気が認知症につながるとして国を挙げて市販のパンの減塩や、タバコの増税による禁煙の推進といった取り組みを行い、認知症が減少したという事例があります。
生活習慣病を招く肥満も認知症のリスク。沖縄県で肥満の人が多いのは本土よりいち早く欧米化した食事も一因と言われています。揚げ物など油っこい食事は控えて適正体重の維持に努めましょう。過剰な飲酒もリスクになるので、適量を守りましょう。例えば、ビールは1日500ミリリットル(純アルコール量が約20グラム)までが目安とされています。
運動習慣も大事です。WHOは週に150分以上を目安に、軽く息が切れる程度の運動(ウオーキングなど有酸素運動)を推奨しています。歩きながら「しりとり」や「計算」を同時に行うような、頭と体を一緒に使うダブルタスク(二重課題)もおすすめです。1人でストイックに行うよりも、みんなでワイワイとレクリエーション感覚で楽しむ運動の方が、継続しやすく効果も高まります。
オフィスワークや家などでの「座りっぱなし」は良くありません。1時間に2回は立ち上がる習慣をつけましょう。筋トレは、最も太く大きな筋肉である太ももの筋肉を鍛えるスクワットを1日10回程度行うだけでも、十分に効果があります。
認知症の予防には、有酸素運動や下肢の筋トレがおすすめ!


また、人との交流が少なく社会から孤立しがちだと認知症になりやすいので、特に65歳以上の方は家に引きこもらず、人と関わりを持つようにしましょう。
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」人生100年!!ココカラ健康長寿(17)
第2038号(2026年9月3日発行)より転載