読了時間 約6分
看護師として30年以上のキャリアを持ちながら、フットマスターとしても活躍している「アフアフ(健康)ウォーク」代表の儀間ゆかりさん(54)。これまで延べ1200人以上の人に、ウオーキングレッスン、オーダーメードの矯正インソール、靴選びのアドバイスを行い、足元から心と体を整えるサポートをしてきた。目指すは「沖縄の健康長寿復活」だ。(文/赤嶺初美・ライター、撮影/比嘉秀明)
アフアフ(健康)ウォーク 代表の儀間ゆかりさん(54)

沖縄の健康長寿を取り戻したい
健康を自分で守る 姿勢に“現れる”人生
小柄だが、美しい姿勢と凛(りん)としたたたずまいが目を引く儀間ゆかりさん。生徒の横に立ち、優しく声を掛ける。「内くるぶしから足裏を通り外くるぶしを結ぶ線の中心、ちょうどすねの骨の下にあるところ、そこがバランスポイントです。まずは、そこに重心を置いてみてください」。その声に合わせ、生徒が静かに足の裏を意識する。「そう、そこです。重心がしっかり取れていると、ほら、押しても倒れないでしょ?」。儀間さんが生徒の肩を軽く押すが体はぶれない。アドバイス前と後の違いの大きさを生徒の表情が物語る。「自分では意識できているつもりでも、そうではないんです。正しいポイントがつかめるようになるまで、しっかりサポートしていきますね」。柔らかいのに芯のある声が静かに響く。
儀間さんは看護師として30年以上のキャリアを重ねてきた。救急やICU、手術室といった現場を経て、外来クリニックで15年勤めるうちに、患者は皆、家から通ってくる「地域で暮らす人」なのだと改めて気付き、その後の歩みを大きく変えた。
34歳で沖縄国際大学の夜間部に通い始め、4年後、卒業と同時に社会福祉士の資格を取得した。仕事帰りに大学へ通う日々は決して楽ではなかったが、「患者さんをもっと理解したい」という思いに背中を押された。「病気そのものだけでなく、その人がどんな暮らしの中で生きているのかを知りたい」。その視点は今の仕事にもそのまま息づいている。
転機は姿勢の悪さを直そうと友人に勧められて始めたウオーキングだった。レッスンを申し込んだ後、儀間さんは、兄に続いて、ずっと介護してきた認知症の父も亡くした。家でふさぎ込むよりはと重い腰を上げたが、レッスンに通い始めると、いつの間にか疲れやすさが消え、沈んでいた気持ちも少しずつ前向きに変わっていった。「体が前に進むと心も前向きになる。心と体はつながっている。足元は健康の土台なんだと実感しました」と当時を振り返る。
44歳で指導者の道へ進み、翌年には「アフアフ(健康)ウォーク」を立ち上げた。「病気になる前に、あるいはなってしまっていても、自分で自分の健康を守れる人を増やしたい」。その思いを胸に、ウオーキングレッスンをスタートした。
外来勤務時代、儀間さんは「年齢の割に腰や背中が曲がり老けて見える人がいる一方で、90代でも背筋がシュッと伸び、おしゃれを楽しみ若々しく見える人がいる」ことに気付いた。「姿勢や歩き方には、その人のこれまでとこれからが表れる」。足元から健康を支えていく活動への思いはますます強くなった。そして靴選びにも着目。県外の指導者に師事し、靴の選び方の指導や矯正インソールの提供も行うようになった。現在は足を見て心身の健康状態を診断する「足相診断©︎」も行っている。
儀間さんが看護師を志したのは、母の勧めだった。母はいつも家族のために頑張り続け、病院にかかろうとせず、儀間さんが高校生のときに心不全で亡くなった。頑張ることの大切さも、頑張り過ぎることの危うさも、母の姿から学んだ。その後、兄、父、めいと大切な人を見送る経験も重なった。命の重さを知っているからこそ「頑張る人を足元から支えていきたい。ひどくなる前に自分の健康を守ることが、周りの人の笑顔を守ることにもつながる」と語る。
目指すのは、沖縄の健康長寿復活だ。「一人一人が自分の体に関心を持ち、病気になる手前で健康を保てれば、これからの人生はもっと自由に楽しくなる」。力強く語る表情に確信が満ちあふれている。
日常生活の歩き方を意識
以前は猫背で「疲れやすい」ことが悩みだったという儀間さん。ウオーキングを学んで、それらの悩みが解消しただけでなく、気持ちも前向きになった。

ウオーキングを学ぶ前の儀間さん。猫背で疲れやすいことに悩んでいた(本人提供)
そんな儀間さんが提唱しているのが「1日300歩で整えるヘルシーウオーキング」だ。「300歩は約10分。スーパーで買い物するくらいの歩数です。実は私自身、運動を頑張るのが苦手。だからこそ、時間や曜日を決めず、いつでも気軽にできる方法を伝えたい」と話す。「大切なのは歩く量ではなく、身体に負担をかけない歩き方を身につけること。日常の歩き方が変われば、1日の何千歩も自然に変わっていく。身体の土台が整っていくんです。身体が整うと、心にも余裕が生まれます」と強調する。
儀間さんが指導するウオーキングやボールストレッチなどは「運動が苦手な人でも、これなら大丈夫というもの。ぜひ体験してほしい」と呼び掛ける。
体と心の変化を共に喜ぶ
これまでセミナーやイベントを通し、延べ1200人に指導してきた儀間さん。受講生は40~50代の女性が多く、「頑張りやさんが多い」と話す。
フットマスターとしては、ウオーキング指導に、矯正インソールも提供。インソールは完全オーダーメードで儀間さんが型を取り、京都の装具メーカーが制作している。インソールは革靴やスニーカーなど、その日、履く靴に入れて使える。ヒール用もある。自然と体のバランスポイントが取れるようになるため、利用者からは「足に羽が生えたよう」との感想も届く。

矯正インソールの型取りをする儀間さん(本人提供)
小さな子どもがいる40代の女性は、疲れやすく、家族の外出に付き合うことさえも難しくなっていたが、レッスンで歩き方が変わり、子どもと一緒に出かけられるようになった。「子どもとの思い出がたくさん増えた」と喜ぶ。儀間さんは「足元を意識したことで人生が変わったという人が多い。その笑顔を見ることが私の喜び」と語る。
プロフィル

ぎま・ゆかり
1971年、那覇市出身。高校を卒業後、愛知県で准看護師の資格を取得。20歳で浦添看護学校に入学。22歳で看護師資格取得。34歳で沖縄国際大学入学。38歳で社会福祉士取得。同年、ウオーキングを学び、2017年、「アフアフ(健康)ウォーク」設立。アフアフはハワイ語で健康の意味。23年、フットマスター資格取得。デイサービスで看護師の仕事も続けながら、フットマスターとしてウォーキングレッスン、靴選びの指導、矯正インソールの提供などにも力を注ぐ。
■アフアフ(健康)ウォーク
https://ahuahuyukari.okinawa
↓画像をクリックすると「アフアフ(健康)ウォーク」のホームページに移動します
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」彩職賢美〈1464〉
第2037号(2026年8月27日発行)より転載
