100年の願い 沖縄に薬学部創設の“つぼみ”膨らむ|彩職賢美リターンズ

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沖縄県薬剤師会が1926年の創設から100周年を迎える。同会会長の前濱朋子さん(63)は、自身が営む「つる薬局」もまた10周年とあって、節目が重なる年となった。会長としては長年の課題である「薬剤師不足の解消」を、経営者としては理想とする「地域に寄り添う薬局」を追い求めたいと熱く語る。(取材/赤嶺初美・ライター、撮影/比嘉秀明)

(一社)沖縄県薬剤師会会長、(同)朋友陽 つる薬局代表社員・薬剤師の前濱朋子さん(63)

薬剤師会100周年 薬局開業10周年

沖縄県薬剤師会会長に就任して3期目となる今年、会は100周年を迎えることができました。私が「彩職賢美」で紹介していただいたときは当会の副会長を務めていたころで、私自身の薬局を開くという夢もかなえた時期でした。当時の利用者の皆さんが「記事みたよ!」と自分のことのように喜んで、声を掛けてもらったのが昨日のことのようです。その薬局も10周年の節目を迎えることができました。

振り返ると、会長になった当初、全国の女性会長は3人しかおらず、今でも6人。薬剤師という職種そのものに男女差はありませんが、会長就任となると、職場や家族の理解という壁があるのを感じます。私は幸い、そこを乗り越えさせてもらい、感謝しています。

薬剤師が活躍できる場は、薬局や医療機関だけでなく行政機関や薬の開発会社などたくさんあること、資格に男女差がなくライフステージに合わせて働き方を変えられ、いつまでも続けられるのが、この仕事の魅力です。やりがいは本当にある。そういうことを若い人、特に女性に伝えていきたい。そして、どんどん挑戦してほしいと願っています。

沖縄に薬学部をつくり、薬剤師不足の解消を

会長に就任以来、ずっと力を入れてきたのが、薬剤師不足の解消です。沖縄は人口10万人あたりの薬剤師数が全国最下位。その解消のため沖縄に薬学部を創設する取り組みを進めてきました。

沖縄の若者が薬剤師になるには、今は県外大学に進学するしかありません。しかし「親に学費は出せないと言われた」とか「女の子だから県外はダメと言われた」という話はよく聞きます。

私は国公立大の薬学部創設にこだわりたいと思っています。沖縄には亜熱帯特有の動植物など豊富な資源があるにも関わらず、それを開発する力が県内になくて、県外企業に先に商品化されてしまう。国公立大学なら研究にも力を入れられるし、横への連携も広げやすい。学費も生活費も抑えられるので、学力のある子たちが夢をあきらめずにすむと思うんです。

沖縄での薬学部創設は、2代前の会長の神村武之先生が土を耕し、前会長の亀谷浩昌先生が水をかけ、私の代でようやくつぼみになった。あとは花が咲くのを願うばかりです。その思いに多くの方が賛同してくださいました(詳しくはこちら)。100周年の記念事業もそのつぼみを育てる一つだと思っています。

10月には「薬と健康の週間」に合わせて記念講演会を開きます。調剤体験を行うなど、薬剤師の仕事に興味を持ってもらえるような場にするつもりです。また11月に、式典祝賀会も行う予定です。全国の薬剤師会会長がいらっしゃるので、沖縄県薬剤師会ならではの取り組みについて、アピールできたらと思っています。

かかりつけ薬局として、地域の人に寄り添う

この100年で1番大きく変わったのは、院外処方箋の発行により、調剤業務が進んだことです。処方薬を調剤薬局で受け取る時代への過渡期は、患者さんも私たちも本当に大変でした。「なんで外で薬をもらわないといけないのか」「年寄りを歩かせるのか」と窓口で怒られたこともあります。

だからこそ「私たちは患者さんが最後に会う医療者だから、怒ったまま帰さないようにしよう」と言ってきました。少しでも話を伺い、笑顔で帰ってもらえたら、それだけでうれしいんです。

かかりつけ医と同じように、かかりつけ薬局という習慣ももっと浸透させたい。そのかかりつけ薬局に、処方箋がなくても、ぜひ気軽に立ち寄ってほしいと思っています。市販薬で大丈夫なこともあれば「これは病院で診てもらったほうがいい」などアドバイスすることもあります。

薬剤師になって40年。ずっとその思いでやってきました。薬局外でも声を掛けてもらえるときがある。信頼関係があってこそだとうれしく思っています。

医療現場においても電子化が進んでいます。生年月日だけで情報検索することができ、数カ月前の処方内容もすぐ分かります。バーコードで確認する監査システムは間違いを未然に防いでいます。書類に向き合う時間が減った分、患者さんとゆっくりお話する時間が増えました。話しているうちに「あれ、おかしいぞ」と気付くこともあり、本当にありがたい変化です。

これからの課題は、オンライン診療の広がりに薬の届け方が追いついていないことや、薬の供給不足などがあります。コロナ禍以降、原材料や輸送の問題が重なって、命に関わる薬まで綱渡りで確保しているのが実情です。会としても知恵を集め、安定化に努めていきたいです。

私自身は、薬局を地域の高齢者が気軽に訪れ、薬に限らず困りごとを話してスッキリして帰ってもらえるような、そんな居場所でいられたらいいなと思っています。

沖縄に薬学部を!10万筆超の署名を提出

県内に薬学部設立を求める署名は10万筆以上集まった。沖縄は人口10万人あたりの薬剤師数が全国最下位で、県外の大学に進学するしかなく、保護者の経済的負担も課題だ。県薬剤師会は、2018年に琉球大学へ薬学部創設を求める署名活動を展開。その結果、目標の5万筆の2倍を超える10万1660人分の署名が集まった。署名は県医師会・県歯科医師会・県看護協会と連名で、薬学部創設の要望書を添えて、琉球大学へ提出した。

沖縄県内に薬学部設立を求める署名は10万筆以上集まった

積み上げられた署名用紙の山は、薬剤師不足という課題に向き合ってきた県民の思いの重みそのもの。前濱さんは「沖縄の薬剤師不足は、本島北部や離島において、さらに深刻です。地域包括ケアシステムの中で薬剤師が担う役割は大きい。しかし、薬剤師の確保が難しいため、その役割を果たすことが困難になっているのが沖縄の状況」と訴え、「つぼみがほころぶように、先達が重ねてきた努力やたくさんの人々の願いが花開くのを見届けたい」と力を込めた。

プロフィル

まえはま・ともこ
1963年那覇市出身。87年、名城大学薬学部卒業、88年、同大学薬学専攻科修了。八重山病院、調剤薬局を経て、2016年、(同)朋友陽「つる薬局」を創業。2010年、県薬剤師会理事。15年、薬物乱用防止協会理事。21年、県薬剤師会会長に就任

2017年1月5日号に掲載

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毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」彩職賢美リターンズ(38)
第2043号(2026年10月8日発行)より転載