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2024年10月3日更新

10月は乳がん月間|がんになっても私らしく|日本トランスオーシャン航空㈱ 客室乗員部キャビンリーダーの新垣志乃さん

日本トランスオーシャン航空はピンクリボン沖縄に協賛し毎年10月に社員がピンクリボンバッチと肩章を着けて、機内アナウンスで乳がん検診を啓発している

乳がん月間は、乳がんの正しい知識・検診の啓発を目的とする国際的なキャンペーン。ピンクリボンがシンボルとなっている。

 

がんになっても私らしく

客室乗務員の新垣志乃さん(48)は、4年前に乳がんと診断された。1年半休職し復職。「がんになっても自分らしく生きることはできる。正しい知識・理解を広めたい」とNPΟ法人に所属し、ボランティアでがん教育の授業を行う。

日本トランスオーシャン航空はピンクリボン沖縄に協賛し毎年10月に社員がピンクリボンバッチと肩章を着けて、機内アナウンスで乳がん検診を啓発している

新垣 志乃さん
日本トランスオーシャン航空(株)
客室乗員部キャビンリーダー


自身の経験 授業で伝える

セルフチェック中、左胸にしこりのようなものを感じた新垣さん。「10年以上毎月セルフチェックを続けてきて、初めての感覚。翌月の健診で乳がん検診を予定していたため、そこでチェックしてもらおうと考えました」

それまで毎年受けていたマンモグラフィーと超音波(エコー)検査は、異常なし。この時初めて異常を指摘され、紹介状をもらった。複数の検査を受け、乳がんと診断される。トリプルネガティブタイプのステージ1。

告知を受けたときは、「そうか」と冷静だった。「早期で見つかって良かった」とも。「医師に、いつから治療を始めますか、と聞きました。落ち込んだり悲しんだりは、なかったですね。元々の性格と、客室乗務員として働く中で、今できることを常に考えてきたからかもしれません」と話す。

当時、小学生から高校生の3人の子育てをしながら客室乗務員として働いていた。勤務先の日本トランスオーシャン航空は、ピンクリボン沖縄の協賛企業で、乳がん治療を経て復職した人も複数いる。職場の協力を得て、1年半仕事を休職した。

 
見たサイトは一つだけ

治療を進める中、乳がんが二つあり、タイプが違うことが判明。抗がん剤治療、手術、放射線治療の「フルコース」を受けた。

最もつらかったのは、手術前に受けた抗がん剤治療だ。だるさと口内の荒れに悩まされ、その後受ける注射の副作用で骨がきしんだ。「寝ながらずっとうなっていたらしく、子どもたちに『あの時何もできなかったのが一番つらかった』と言われました」と振り返る。

「ただ、波はあって、徐々に体は回復していく。きつい時は薬が効いている、と考えました」。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けた時は、「見てみて~」と子どもたちに見せた。丸坊主にした時も「一度やってみたかったから、良い機会になった。ウィッグは茶髪やロングなど、普段できない髪型にトライ。落ち込むよりも楽しんじゃえ!と」と笑う。抗がん剤治療で小さくなったがんを、内視鏡手術で切除。その後、放射線治療を受けた。

治療中、質問ノートを作り、分からないことは医師や看護師にとことん確認した。ネットで見たのは、国立がんセンターのHPのみ。他は「私に当てはまるとは限らない」と考え、検索しなかった。高額療養費制度を利用し、生命保険から保険金がおりたため、費用面を心配せず治療に専念できた。

状況は細かく家族に伝え、体がきつい時は家事を休んだ。オンラインの患者会に参加し、当事者と感情を共有することで、気持ちが楽になった。

 
がん、命について授業
新垣さんはNPO法人沖縄がん教育サポートセンターに所属し、小・中・高校でがん教育の授業を行う。上の画像は授業で使ったスライド
 
がんで得た出会い、学び

2年前、仕事に復帰。最初は勤務時間を減らし、少しずつ体を慣らした。「3カ月は体力的にきつかったのですが、今は以前と同じように旅客機にも搭乗します。治療中、また制服を着て接客するんだと、戻る場所があることが支えになりました」。現在は薬を飲み、定期的に通院。手術した胸は張り、忘れた頃に痛む。薬の副作用でホットフラッシュのような症状とむくみが出るが、「滝汗が出ると『修行タイム』と言ってます」とさらりと笑う。

「がんになっても自分らしく生きられる。それには、周囲の理解と協力が欠かせない」と、NPO法人に所属し、がん教育の授業を行う。「がんを通してたくさんの学びと出会いがあった。がんになったことは、不運だけど不幸じゃない」。取材中、常に笑顔で明るかった。

 
  身近な人ががんになったら?    
身近な人ががんになったら、どう接したらいいのだろう。新垣さんは「私はいつも通り接してもらえるとうれしいけれど、どんなサポートが必要かは人によって違う。憶測ではなく、本人にきちんと気持ちを聞くことが大切だと思う」と話した。


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取材/栄野川里奈子
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」
第1939号 2024年10月03日紙面から掲載

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