[彩職賢美]ひめゆり平和祈念資料館説明員の仲田晃子さん|平和と命の尊さ次世代へつなぐ|fun okinawa~ほーむぷらざ~

沖縄で暮らす・食べる
遊ぶ・キレイになる。
fun okinawa 〜ほーむぷらざ〜

沖縄の魅力|スマイリー矯正歯科

毎日を楽しく

彩職賢美

2019年6月20日更新

[彩職賢美]ひめゆり平和祈念資料館説明員の仲田晃子さん|平和と命の尊さ次世代へつなぐ

沖縄戦で看護要員として動員され、136人の生徒・教師が犠牲となったひめゆり学徒隊を大学院で研究したことがご縁で、ひめゆり平和祈念資料館の説明員になりました。来館者の「知りたい」に応える説明や企画を通して、学徒の体験と平和への願いを次世代へ伝えていきたい。

学徒の体験と思い語り継ぐ

ひめゆり平和祈念資料館 説明員
仲田晃子 
さん

分かりやすさと気づき意識 証言員との語らいが財産に

ひめゆり学徒の戦争体験を語り継ぐ場として設立された「ひめゆり平和祈念資料館」。かつての学び舎(や)をイメージした赤瓦屋根の建物は花や緑にあふれ、平和のありがたさを実感する。

資料館の展示は、沖縄戦が始まる前、学校生活の紹介から始まる。バスケットリングの前でポーズを決め、笑顔で写真に収まる籠球(バスケットボール)部の女学生たち。「かなり強いチームだったそうです。写真をご覧になると皆さん、当時、室内にリングがあったことに驚かれます」
 
来場者に声をかけ、展示品や沖縄戦での痛ましい体験などを分かりやすく、丁寧に説明する仲田さん。高齢化のため語り部活動(証言員)の一線から退いた元学徒に代わり、戦争の恐ろしさ、平和の尊さ、命の大切さを伝えている。「来館者の知りたいという思いに応え、気づきが得られるような話を大切にしています」

生存者による証言が難しくなることを見据え、資料館で育成を始めた「説明員」の第1号として2005年に採用。大学院で、ひめゆり学徒隊に関する新聞報道について研究していたことから、声が掛かった。

「学生時代に本村つる元館長から『資料館の応援団になってちょうだいね』と言われ、何をしたらいいのかとずっと考えていました。関心を持って学んだことが生かせる仕事に就けるとは思っていなかったので、とてもありがたかった」と振り返る。
 
バトンタッチを終えるまでの約10年、元学徒と一緒に活動する中で、その体験と思いを蓄積した。「証言員のみなさんの表現や考えで不思議に思ったことは、何度も質問しました。一つ一つ丁寧に答えてくださったみなさんの言葉と姿勢が、私たちの財産になっています」
 
12年には生存者の戦後に焦点を当てた「生き残ったひめゆり学徒たち」を企画した。「生存者の方々は、亡くなったお友だちやそのご家族の視線をずっと感じていて、言葉にできない思い、目に見えない傷を抱いている。『あなたたちにしかできない企画だね』とおっしゃっていただいたことが、胸に残っています」


2019年6月23日、開館30周年を迎える資料館。来館者の感想文を取りまとめる中で近年、「ピンと来ない」という学生のコメントが目につくようになった。

「そう感じている自分に引っかかりを覚え、向き合っている様子も感想文から伝わってくる。いまいちピンと来ない状況をスタート地点に、戦争体験を伝える方法を考えることも必要」と感じている。

一方で、30~40代の親が「子どもと一緒に戦争のことを学び、話をする機会を持ちたい」と、小学生を連れて来るケースは増えている。時代の変化にどう対応するか。17年、ヨーロッパで開かれた国際平和博物館会議に参加する旅中で訪れたアンネ・フランク・ハウスで、運営関係者から聞いた話がヒントになった。

「戦争が人々の記憶から遠ざかっていることを前提に、事実の意味を伝えることを軸にした展示や発信をしていて、なるほどと思った」
 
2018年は同ハウスと共同で、若者を対象に沖縄戦の記憶を映像作品にするワークショップ「メモリーウオーク」を実施。今年4月には遺族向けのフィールドワークを開くなど、新たな取り組みに挑戦している。

「親子で気軽に参加できる企画も、増やしていきたい」。平和への願いを胸に、次世代への継承活動に力を注ぐ。


親子向け、遺族向けにフィールドワーク

ひめゆり平和祈念資料館提供

近年、来館者に親子連れが増えていることを受けて昨年、夏休みに親子フィールドワークを企画。小学生以上の親子を対象に、2時間程度で戦跡を巡り解説した。

「平和学習というと、ちゃんとやらなきゃという意識から戦跡巡りも2日がかりになってしまうこともある。生活の中で気軽に参加しやすい企画で、沖縄戦に触れる機会を増やしていければ」と仲田さん。2019年も7月と8月に開催される。


ひめゆり平和祈念資料館提供

また、開館30周年事業の一つとして今年4月には、亡くなったひめゆり学徒、教師の遺族を対象にした戦跡巡りも初めて行った。「毎年の慰霊祭に参加するご遺族も、弟さん、妹さん、おい、めい世代に変わってきている。沖縄戦のことを知りたがっている方たちに応える機会をもう少し持てたら」と思いを寄せる。



2019年6月29日に開館30周年記念イベント


開館30周年を記念して「ひめゆり映像ドキュメンタリー上映会」が2019年6月29日(土)、那覇市安里のひめゆりピースホール(ひめゆり同窓会館2階)で開かれる。

ひめゆり平和祈念資料館づくりに奔走する元ひめゆり学徒たちに密着した1989年のテレビ放送と、ひめゆりの次世代継承を追った2017年のテレビ放送、二つのドキュメンタリー映像を上映。番組制作に関わった2人と、普天間朝佳館長を交じえてトークを行い、30年前の元ひめゆり学徒とひめゆり平和祈念資料館の現在を見つめる。トークの聞き手は仲田さんが務める。参加費は無料(要予約)。詳細はひめゆり平和祈念資料館へ。

問い合わせ先
ひめゆり平和祈念資料館
098‐997‐2100



プロフィル
なかだ・あきこ

1976年、那覇市出身。琉球大学大学院修了。大学院の修士論文では、ひめゆり学徒隊が戦後、どのように伝えられ、沖縄戦の象徴となったのかを研究した。2005年、ひめゆり平和祈念資料館に説明員第1号として採用。5人の職員と共に館内展示の説明や平和講話に当たるほか、イベントの企画・運営なども手掛ける。学芸課係長


週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1337>
第1664号 2019年6月20日掲載

彩職賢美

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

キュレーター
比嘉千賀子

これまでに書いた記事:25

編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

TOPへ戻る