宜野座の渚でエトセトラ|新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

新城和博

2019年8月2日更新

宜野座の渚でエトセトラ|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記Vol.63|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。



宜野座の渚でエトセトラ

 ここ数年、海水浴をした記憶がない。そういう沖縄人は意外に少なくないはずだ。ビーチパーティー、今年もまた予定がないというかたも多いでしょう。友達の少ない僕だけではないはずだ……。
 それでも海を眺めるのは好きだ。浜辺を歩くのも嫌いじゃない。ただその時間をとれるかどうか。日々の暮らしに追われてしまい、気がつくと、海は遠く、モノレールから眺めるくらいになってしまっていた。小さな島の都会生活者の憂鬱(ゆううつ)である。
 もう知らない誰かのビーチパーティーに誘われなくてもいい。そんな妄想より、とりあえず渚(なぎさ)を歩きたい、海を眺めたい、できたら誰もいない海で……。と、せっぱづまった気持ちでとりあえず出かけたのが、宜野座だった。
 なぜ宜野座なのか。それは僕にもわからないが、もしかして人気(ひとけ)がない浜がありそうという思いこみだけで、首里から高速道路にのって北上したら、あっという間に宜野座だった。山原の入り口というか、山のみどりは深く、途中ちらりとみたダムだけでも、とりあえず街を離れてきた、という気持ちになる。
 なんの下調べもしていないので、適当に東側の海岸沿いに車を走らせる。すぐに住宅はまばらになり、畑の中の道路をすすむ。海沿いだけど、西海岸のように大きなホテルはなくて、穴場的なペンションの看板があちらこちらにある。そうしたおしゃれっぽい場所をさけて、単なる漁港、船着き場っぽいところを探していたら、ありました。地元の海人(ウミンチュ)さんたちの小さな漁船が係留している船溜り(ふなだまり)と、その横に広がる何もない浜。だれもいない渚である(作業中の海人さんたちはとりあえず視界から外しておく)。青い空と青い海と足跡のない浜。ばっちりである。しかし見たいのは、渚の足元に漂う「かいそう」である。


船溜まりの横の藻場

 じつはここ数年、仕事で沖縄の海藻・海草(紛らわしいが両方とも「かいそう」と読むのだ)に関する原稿を整理し続けていた。アーサとかモズクとかクビレズタとかヒジキとかである。まったくの専門外のサンゴの海の植物たちの話なので理解するまで大変だった。方言名「アーサ」と、いわゆる「アオサ」が違う種類って知ってましたか、みなさん。
 そして今年の夏、ようやく潮間帯(潮の満ち引きするところ)に生息する海藻・海草の視点で、沖縄島の海岸線、浜辺の景観を味わうことができるようになった(と思いこむことに成功した)。
 海藻・海草は、どこにでもいるわけじゃなくて、一定条件を満たした場所に、きわめて細かくすみ分けしている。島の南と北、東と西の海岸線の、地形、地質、季節の風の吹き具合、波のあたり具合、潮の干満具合によってぜんぜん違うのだ。
 宜野座のその浜は準開放性のポケット浜で、北部特有の琉球石灰岩よりもっと古い地層で、これって嘉陽層? この岩場、褶曲(しゅうきょく)してるし。などと思いつつ、波間に漂う海藻・海草を見つけた。海中に黒々と見えるのが海草が群生している「藻場」といわれるところだ。海中でゆらゆらしているその姿を見たかったのだ。海の楽しみ方はいろいろあるのだ。


上写真も下の写真も褶曲している海岸の岩場


 あんな風に、いろいろ厳しい環境のもとでも、ゆらゆらと自然体で暮らしていきたいものだ……。などと、小さな島の都会生活者はつぶやきつつ、宜野座の渚でほんの少し、夏を味わった。
 そのあと、宜野座の道の駅で地域観光地図を手に入れ、人気のあるカフェでボリュームたっぷりのランチをとり、人気のない図書館で本を読んで、宜野座を満喫した。宜野座の穴場、また行きたいなぁ。 


海草は干上がっている場所でも生きています

 

新城和博

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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