まだまだ知らない旧盆のはなし|新城和博のコラム|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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COLUMN

新城和博

2018年9月3日更新

まだまだ知らない旧盆のはなし|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記Vol.43|首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

 

今回はシンプルに今年一番びっくりした話です。

先日のこと。お盆の中日、いつものように親戚まわりのドライブを楽しんでいました。うちの父親は亡くなっていますが、戦後、慶留間島というところから那覇に出てきて、親戚関係の多くも沖縄本島にいるので、お盆の親戚まわりは、那覇、糸満よりの豊見城あたりをまわっています。

ここ最近は一人でまわることが多い。車の中ではなぜかジョニ・ミッチェルを聴くようにしています。「ドン・ファンのじゃじゃ馬娘」とか。お盆との関連はまったくないのですが、一度お盆で聴き始めて以来、くせになってしまい、そうすることで「お盆ドライブ」な気持ちになるのです。うっ、どうでもいい話をしてしまった。

毎年この時にしか会わない親戚のおばちゃん、おじさんたちの話を聞くのが楽しみです。うちは親戚もコンパクトな感じで、新聞・テレビなどで見られるお盆で親戚がたくさん集まって賑(にぎ)やかな光景というお家はあまりありません。ひとりトートーメーを前にしているおばちゃんとだけお話しする、静かな時間がお盆の風景です。

僕が親戚まわりをするようになってからの付き合い、というところもあります。なぜか。そこの家のおじさんが亡くなってトートーメーが発生したからです。発生はまずいか。とにかくトートーメーがあるところに手をあわせに行くのがお盆の基本ですよね。

それでもう十数年毎年1回はお会いしてトートーメーに手を合わせて、近況をお聞きしたり、「最近新聞に書かれてませんね」なんて言われたりしているわけです。ひととおりいろんな昔話を聞いたつもりになっていました。

さて今年も、一人暮らしのおばちゃんのお家に行った時のこと。

こんにちはー、と声を掛けて、勝手知ったるという感じでお邪魔。いつものようにおばちゃんが一人で座ってました。最近は腰が悪くなっているので、お手を取らせるのもなんだからと、トートーメーに手を合わせて、少しだけお話しして、長居することなく戻ろうとしました。



そこでふとベットのうえに(腰が悪いので居間のそばにベットがあったのだ)、一冊の本が置かれているのが目に入りました。上原正三著『キジムナーkids』。「あっ、この本読んでいるんですかー」とちょっと嬉しくなって声を掛けました。

あの円谷プロでウルトラマンの脚本を、かの金城哲夫さんらとともに書いていた、伝説の脚本家の上原正三さん。一昨年ある文学賞の審査員として参加したときにご一緒させていただいて、ウルトラマン世代の僕としては大感激したことがありました。沖縄出身の大先輩としても尊敬するのだけど、実にいい人でした。この『キジムナーkids』はわざわざ上原さんが僕に送ってくださった書き下ろしの小説。戦後直後の沖縄で暮らしていた少年、少女たちの物語で、たぶん自伝的な内容。

するとそのおばちゃんは、ふふとはにかんで
「弟なの」
というではありませんか。

えー、上原正三が弟! 思わず呼び捨て。

ということは、おばさんはお姉さん! 思わず当たり前のこと。

えー! と声を出してしまいました。早く言ってよー。

旧姓が上原なのよ、小説の中にも私の小さい時のことがそのまま出てくるの、とのこと。ウルトラマン世代にとっては、スペシウム光線なみの衝撃でした。

いやー、こんなに毎年一度はお会いしているのに、ほんと驚愕(きょうがく)しました。まだまだ知らないことだらけ。これだからお盆ドライブは止められない……。

これからは、「僕はウルトラマンと遠い遠い遠い親戚なのだ」という風に心の中で叫びたいと思います。シュワッチ!


 

おまけ



あらためて、初めまして!
沖縄の出版社ボーダーインクです。

要項
「もうすぐ30th anniversary ボーダーインクフェア」

<日程>
2018年9月1日(土)~2018年9月30日(日)

<会場>
ジュンク堂書店那覇店 1階

<時間>
午前10時~午後10時

<問い合わせ>
ボーダーインク
098-835-2777

ジュンク堂書店那覇店
098-860-7175

<主催>
ボーダーインク

1990年4月那覇にて創業以来、数え年でいうとそろそろ30年を迎える地元沖縄の出版社ボーダーインク。いつの頃からか「明日に向かって千鳥足!」を社是に、沖縄に関する書籍を、与儀の電柱通りから、いろんな境界を超えてこれまで約500点を刊行してきました。
今回、ジュンク堂書店那覇店の協力の下に、あらためてこれまで刊行してきた書籍を可能な限り揃えて、読者の方々にじっくり見ていただくことになりました。

  • 刊行書籍(新刊・既刊・希少本など)コーナー
  • ボーダーインクスタッフセレクト ユニークな切り口でお勧め本コーナー
  • 歴代売上げランキング ベスト10
  • 私(読者)が選んだボーダーインクおすすめ本
  • 創立者・宮城正勝が選ぶ50冊(ここ数年読んで印象に残った本※ボーダーインクの本ではありません)
  • 宮城ヨシ子写真展「フレーム アウト! な人々」
  • 本の原画展
  • ボーダーインク紹介フリーペーパー

つきましてはフェアのご紹介や取材などご検討のほどよろしくお願いします。


 

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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