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COLUMN

新城和博

2016年10月29日更新

隣の空き地は青かった|新城和博のコラム

ごく私的な歳時記 Vol.22
首里に引っ越して20年。「ボーダーインク」編集者でライターの新城和博さんが、この20年も振り返りながら、季節の出来事や県産本の話題をつづります。

隣の空き地は青かった

いよいよ隣の家の工事が始まった。

現在の敷地に新居を建てて引っ越ししてから、8年くらいたつ。最初、向こう三軒両隣に家はなかった。新しく土地を整備してひそかに売り出されていたところで、土地を造成するところから見ていた場所だ。土地が整地された後、少し時間がたって雑草が生え、その中からなぜかプチトマトが実を付けたりしているうちに建築許可が下り、ローンもガツンと組んで工事は始まった。ちょうど今頃の季節だったかな。


空き地|新城和博さんのコラム
造成前→造成後


恐る恐る始めた新居造りはいろいろ大変であったが、それなりに充実した期間であった。毎日工事現場を見に行って施工会社とやりとりし、大工さんたちに飲み物を差し入れしたり、いろいろ細かいところが気になりそわそわドキドキしていた。この不安定な状況は何かに似ている…。そうだ思春期だ、この不安と期待が入り交じった感じは! 住宅造りはオトナの階段を上る儀式なのだ! などと当時ブログに書いていた。

出来上がった新居に引っ越した時、近接する住宅はなかった。振り向けば森、という場所だったのだ。夜になると周りは暗くて、なんだかヤンバルに来たみたいだなぁと星を見上げたりしたものだ。

しばらくすると東隣に家が建ち、南正面にも建ち、そのまた奥にも家が建って、売り出された土地は順調にうまり、ヤンバル感は急速になくなった。しかし窮屈な感じがしなかったのは、小さな里道を挟んだ西側の少し高低差のある場所が空き地だったからだ。


空き地|新城和博さんのコラム
「空き地フェチ」のコレクション。街角の空き地には、いつの間にか畑になっているところもある。


いつ売りに出されてもおかしくない場所なのに、なぜだかずっと草ぼうぼうの空き地のままで、季節ごとの雑草を眺めることができて和んでいた。僕は、ほっとかれている空き地の風景が大好きなのだ。「空き地フェチ」なのである。散歩しながらも、住宅地の一角が空き地になって、しばらくすると雑草がぽちぽち生えているのを見ると、そこに小さなサバンナ、そしてやがて草原や小さなジャングルになるのではないかと想像してしまうのだ。身近な自然の力を感じたりする…。

この夏、その和みの空き地がいつのまにか雑草を刈り取られたかと思うと地鎮祭が始まっていた。いよいよ恐れていたことが起こった。家が建つのだ。しかもどうやら一挙に二棟も。これでわが家も囲まれてしまった。オセロゲームだったらひっくり返させられるところだ。

工事は順調に進んでいる。新しい家が建てば強烈な西日ともおさらばなのである。心の準備はできた。ようこそお隣さんたち…。


 

<新城和博さんのコラム>
vol.34 かつてここにはロマンがあった
vol.33 夏の終わりのウッパマ
vol.32 ちょっとシュールでファニーな神さま
vol.31 セミシャワーと太陽の烽火
vol.30 甘く香る御嶽かいわい
vol.29 松の浦断崖と田園段丘の旅
vol.28 一日だけの本屋さん
vol.27 春の呑み歩き
vol.26 そこに市場がある限り
vol.25 すいスイーツ
vol.24 妙に見晴らしのよい場所から見えること
vol.23 帯状疱疹ブルース
vol.22 隣の空き地は青かった
vol.21 戦前の首里の青春を偲ぶ
vol.20 君は与那原大綱曳をひいたか?
vol.19 蝉の一生、人の一日


過去のコラムは「コノイエプラス」へ


新城和博さんのコラム[カテゴリー:まち歩き 沖縄の現在・過去・未来]
ごく私的な歳時記 vol.22

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ライター/編集者
1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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